5/24苫小牧支部5月例会報告
5月24日(水)、アイビー・プラザ多目的ホールにて苫小牧支部5月例会を行い、68名が参加しました。函館支部副幹事長でもある相互交通(株)取締役社長 諏訪部 利夫氏をお招きし、「経営者の本気が会社を変えた!~社員と思いを共有し未来を切り拓く~」をテーマにご報告をいただきました。
信州上田市安楽寺には、「本気ですれば大抵のことができる 本気ですれば何でもおもしろい 本気でしていると誰かが助けてくれる」という言葉があり、諏訪部社長がこの言葉が大好きだそうです。
因果関係という言葉がありますが、因と果の関係についても教えていただきました。因と果の間には縁があり、因と縁の結びつきによって果が生まれる。そして、因と縁の結びつきが強ければ強いほど、果も大きくなる。因と縁の結びつきを強くするもの、それは運であり、その運はどこから来るのか?それは、何でも本気でやることからだと言います。
報告は、諏訪部社長がまだ若かりし頃の赤裸々な体験談から始まりました。国家公務員から始まった社会人人生でしたが、その後、培ったコンピューターの知識を武器に起業。何にでも本気で取り組むことで多くの運に助けられたと言います。
バブルの波にも乗って会社は急成長。右肩上がりに伸びる売上ゆえに、諏訪部社長はいつしか天狗になってしまいました。起業した頃の気持ちもすっかり忘れて、夜の街に繰り出しては散財する毎日。そんな姿の諏訪部社長に周りからどんな苦言が呈されても、そんな言葉は全く耳には入ってきません。しかし、その後バブルははじけてしまいます。
売上の債権は不良債権に変わり、銀行からも貸しはがしが始まります。メインの商品も類似品の台頭などにより利益率は大きく下がり、会社は倒産の危機に立たされます。借入金の返済のために自宅は売却、社長の座を専務に譲り、社員も大幅にリストラせざるをえなかったと言います。「もう二度とこんなことをしてはいけない。」罪悪感に苛まれ、3年間何も手につかない日々が続きました。
その後、「家から会社が近かったこと」「タクシー運転手ならすぐに辞められるだろうと思った」という単純な理由から、宮城県の平和交通に入社したそうです。しかし、持ち前の上昇志向を発揮し、本気で取り組んだ結果、結果はすぐに付いてきます。営業成績は社内でトップレベルになりました。
手腕を買われて函館の相互交通(株)の取締役社長として抜擢された諏訪部社長は、同友会函館支部に入会します。初めて参加した支部の例会で、隣に座った方に名刺を渡すと、「ぜひ紹介したい人がいる」と言われ、その方の前に立つと、その方の第一声は、「私は相互交通のタクシーには絶対に乗らないことにしている」だったそうです。乗務員の態度の悪さなどが原因でしたが、社内からは相互交通の良い話しか聞いて来なかった諏訪部社長にとって、これは驚きの瞬間でした。
諏訪部社長にとって、会社への苦言は耳の痛いことであったはずですが、この出会いも運の良いことだったと捉え、社内改革に取り組むきっかけとなりました。
取り組みの手法の一つとして、「スパイ大作戦」と銘打ち、支部会員にタクシーチケットを配り、相互交通のタクシーに乗ってもらい、レビューを集めることもしたそうです。そして、これらの社内改革はある決定的な分岐点を迎えます。それは、改革責任者に任命した営業課長さんが癌で入院、闘病の甲斐なくその後亡くなってしまいます。しかしその間、社員全員で会社を支えるという一体感が、改革の炎に火をつけたと言うことです。その後も、犯罪者から子供たちを守りたいという一心から、すぐに小学校の校長に直談判し、子供たちの避難場所として相互交通のタクシーを使って下さいと訴えかけたことで始まった「SOS救援タクシー」など、相互交通は地域との関りを強くしていきます。
諏訪部社長が社内改革に取り組む際、最も重要視したのが経営指針における「労使見解」であり、「労使見解の形成にはコミュニケーション力が欠かせない、無口な人は社長に向かない」とお話しされました。外部・内部ともによく話し、自分の考えを丁寧に伝えることで無用な摩擦を防ぐことができると言うことです。「経営指針を主軸としたコミュニケーション力と労使見解の両輪で実践ロードを駆け上ることが大切」ともご説明されました。
科学性、社会性、人間性の観点から改革に取り組み続けた結果、スパイ大作戦も、今では相互交通に対する良い声が圧倒的に多くなったそうです。
諏訪部社長の報告には「運」という言葉が多く出てきます。本気が生み出す運があるからこそ、結果を出すことが出来ると言います。しかし、何にでも運を感じ、それに対して「ありがたい」という感情を持つことのできる諏訪部社長だからこそ、結果に繋げることができるのではないでしょうか。
諏訪部社長の言葉を借りれば、同友会は本音をぶつけあう場。会社にいるだけでは見えてこない視野の外から気づきを与えてくれる場。今回の例会は、まさに私たちに多くの気づきを与えてくれました。そして、経営指針の大切さを改めて私たちに教えてくれたご報告でした。
お忙しい中、函館から苫小牧まで駆けつけてくださった諏訪部社長、そして、諏訪部社長を慕って日帰りで例会に参加してくださった多くの函館支部会員の皆様には、心よりお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
(投稿/支部三役会・佐藤)